設置から年数が経過した機械式駐車装置について、あとどれくらい使えるのかと気になったことはないでしょうか。
耐用年数という言葉には、税務上の計算に使う年数と、実際に設備が使用できる年数という2つの意味があります。この2つは一致しないため、混同すると判断を誤ることがあります。
この記事では、機械式駐車装置の耐用年数の考え方を整理したうえで、部位ごとの寿命の目安、耐用年数を過ぎた設備で起こること、そして更新を検討すべきサインについて解説します。マンション管理組合やビルオーナーの方が、今後の方針を判断する材料としてご活用ください。
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機械式駐車装置の耐用年数には2つの意味がある

機械式駐車装置の耐用年数を考えるとき、まず区別しておきたいことがあります。
税務上の減価償却で使う「法定耐用年数」と、設備が実際に稼働できる「実使用年数」は別のものです。法定耐用年数を過ぎたからといって、設備が使えなくなるわけではありません。
法定耐用年数は減価償却の計算に使う年数
法定耐用年数とは、資産の取得費用を何年に分けて費用計上するかを定めた年数です。
機械式駐車装置の場合、設置形態や登記の状況によって適用される区分が異なります。構築物として扱われる場合と、機械及び装置として扱われる場合があり、立体駐車場の建物本体と駐車装置を分けて計上するケースもあります。
区分の判断は個別の状況によって変わるため、具体的な年数については所轄の税務署または顧問税理士へご確認ください。当社は税務の専門機関ではないため、税務上の取り扱いに関する個別の判断はいたしかねます。
重要なのは、この年数が「設備の寿命」を示すものではないという点です。
実際の使用年数は25〜30年が目安
適切な保守を継続していれば、機械式駐車装置は25〜30年程度の使用が可能です。
目安となるのは、一般的な点検回数である年4回以上の定期点検を継続し、劣化が進んだ部品を適時交換していることです。実際、設置から30年以上が経過しても稼働している物件があります。
一方で、点検を怠ったり必要な部品交換を先送りしたりすると、法定耐用年数を迎える前に不具合が頻発することもあります。年数そのものより、どのような保守を行ってきたかが実使用年数を左右します。
長期修繕計画では25年目が入れ替えの検討時期になる
長期修繕計画上は、基本的に設置から25年目で入れ替え更新を検討します。
ただし、沿岸部の塩害や地下水による常時湿気など、設置環境が良くないケースでは判断が変わります。部品だけでなくパレットや支柱の発錆が進行し、修繕予算が嵩むためです。この場合、25年より前に入れ替え更新をご提案することもあります。
なお、タワー式装置については、基本的に入れ替えを行わず修繕で対応するのが一般的です。
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機械式駐車装置の寿命を左右する4つの要因

同じ年数が経過していても、機械式駐車装置の状態には大きな差が生まれます。
その差を生む要因は、主に次の4つです。
保守点検の実施状況
定期的な点検と消耗部品の交換を行っているかどうかが、最も大きく影響します。異常の兆候を早期に発見できれば、小規模な修繕で対応できます。点検を先送りすると、故障が発生してから大がかりな修理が必要になります。
設置環境
屋外設置か屋内設置かで、劣化の速度は変わります。屋外では雨風や紫外線にさらされ、金属部の腐食が進みやすくなります。海沿いの立地では塩害の影響も受けます。地下ピット式の場合は、湧水や結露による影響を考慮する必要があります。
稼働頻度
入出庫の回数が多いほど、チェーンやモーターなどの駆動部分は摩耗します。同じ設置年数でも、稼働台数が多い物件では消耗が早く進みます。
機種と構造
二段式、多段式、パズル式、タワー式では構造が異なり、部品点数や駆動系の負荷も変わります。構造が複雑な機種ほど、点検すべき箇所は多くなります。

機械式駐車装置の部位別の寿命とメンテナンス周期

機械式駐車装置は、パレットやチェーン、モーターなど複数の部品で構成されています。部位によって劣化の進み方や交換時期が異なるため、それぞれの目安を把握し、計画的に点検・修繕することが重要です。
なお、実際の寿命やメンテナンス周期は、メーカーや機種、設置環境、使用頻度によって異なります。
パレット|塗装・防錆は5〜10年が目安
パレットは、5〜10年程度を目安に塗装や防錆処理を検討します。
車を載せる台で、屋外では雨水や湿気の影響を受けやすく、サビや腐食が進みやすい部位です。定期点検では、腐食や変形、塗装の剥がれなどを確認します。

チェーン|交換は10〜15年が目安
チェーンは、10〜15年程度が交換時期の目安です。
パレットを昇降・移動させる部品で、使用を続けると伸びや摩耗が進みます。点検では、摩耗の程度や伸び、給油状態などを確認します。
ローラー・車輪|10年前後から劣化に注意
ローラーや車輪は、10年前後から摩耗や劣化に注意が必要です。
パレットの移動を支える部品のため、摩耗すると異音や振動、動作不良につながります。がたつきや異音がないか、定期的に確認します。
モーター|交換・修繕は約10年が目安
モーターは、約10年を交換・修繕の目安とする例があります。
装置を動かす動力源で、劣化すると異音や振動が発生したり、装置が動かなくなったりする場合があります。点検では、動作状態や異音の有無を確認します。
制御基板・インバーター|約5〜10年が修繕・交換の目安
制御基板やインバーターは、約5〜10年を修繕・交換の目安とする例があります。
装置の昇降や移動を制御する電気部品で、経年劣化によってエラーや動作不良が起こる場合があります。定期点検では、エラー履歴や動作状態を確認します。
機械式駐車装置の維持費の目安
機械式駐車装置の維持には、継続的な費用が発生します。
主な内訳は次のとおりです。
- 定期保守点検費用(法令に基づく点検を含む)
- 消耗部品の交換費用
- 電気代
- 故障発生時の修理費用
- 損害保険料
このうち保守点検費用と電気代は、毎年ほぼ一定額が発生します。一方、部品交換費用と修理費用は、経年とともに増加していく傾向があります。
金額そのものは、駐車装置の機種と収容台数によって大幅に異なります。他物件の金額をそのまま自物件の目安とすることはできないため、必ず自物件の条件で確認してください。
高額な修繕金額を提示された場合は、その場で判断せず、入れ替え更新の金額もあわせて確認します。修繕費と更新費用を並べて比較することで、どちらが妥当かを判断できます。
また、点検会社によっては部品交換の可否を細かく判断し、修繕費を抑えながら延命する対応も可能です。
設置から年数が経過するほど、突発的な修理の頻度は上がります。当初の想定より修繕費がかさむようになった場合、その物件は更新を検討する時期に入っている可能性があります。
耐用年数を過ぎた機械式駐車装置で起こること
法定耐用年数を過ぎても設備は使用できますが、経年に伴って生じる課題があります。
更新の判断材料として、実際に起こり得ることを整理します。
故障の頻度が増え、修繕費が積み上がる
設備が古くなると、突発的な故障が増えていきます。
一度あたりの修理費用は数万円から十数万円程度でも、年に複数回発生すれば負担は大きくなります。数年分を累計すると、更新費用に近い金額になっているケースもあります。
修繕を繰り返しながら使い続けるか、更新して長期的な負担を平準化するか。修繕履歴を振り返ることが、この判断の出発点になります。
部品の供給が終了し、修理できなくなる
部品の供給が終了する年数について、明確な決まりはありません。
メーカーや部品によって異なりますが、代替品の供給を含めれば、PL法の観点から最低でも10年程度は確保されていると考えられます。実際、大手メーカーでは販売から25年が経過した機種でも、部品供給が継続している例があります。
注意が必要なのは、事業を終了したメーカーの装置です。この場合は供給の継続が見込めないため、故障時の対応が限られます。
供給が終了すると、故障しても純正部品での修理ができなくなります。代替品での対応が可能な場合もありますが、機種によっては対応できず、装置ごとの更新が必要になります。
現場で最も対応に困るのが、この「まだ動いているが、壊れたら直せない」という状態です。突発的な故障で長期間使用できなくなると、入居者の駐車場所を確保する必要が生じます。
部品供給の終了については、メーカーから事前に案内が届く場合があります。案内を受け取った時点で、更新計画の検討を始めることをおすすめします。
消耗品の調達に時間がかかるようになっている
近年、保守に使用する資材の調達環境にも変化が生じています。
コロナ禍の影響から始まり、現在も中東情勢の影響とみられる納期の遅延が続いています。とくに半導体関連の部品と、石油製品関連(電装品を含む)の一部で、以前ほど短納期での入手が難しくなりました。チェーンやワイヤーロープへの給油に使う潤滑油やスプレー類も、その一例です。
さらに、ここ数年でリレー類など一部の部品について製造を終了したメーカーが複数あります。純正部品が入手できず、代替品を探す場面も増えています。
保守に必要な資材が即座に手に入らない状況では、点検や部品交換の先送りが従来以上のリスクになります。とくに古い機種は専用部材を必要とすることが多く、調達環境の変化による影響を受けやすい傾向があります。
安全性に関わる不具合のリスクが高まる
経年劣化は、安全面にも影響します。
センサー類の誤作動やブレーキ系統の劣化は、車両の落下や挟み込みといった事故につながる可能性があります。機械式駐車装置は不特定多数が利用する設備であり、所有者・管理者には適切に維持管理する責任があります。
点検で指摘事項が増えてきた場合は、その内容を記録し、対応の優先順位を整理してください。
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機械式駐車装置の更新を検討すべきサイン
年数だけでは判断できないため、設備の状態から検討時期を見極めます。
次の項目に複数該当する場合、更新の検討を始める時期に入っています。
- 設置から25年が経過している
- 故障による停止が年に複数回発生している
- 修繕費が年々増加している
- 部品の取り寄せに時間がかかるようになった
- メーカーから部品供給終了の案内が届いた
- 入居者から動作音や待ち時間について苦情が出ている
- 定期点検で指摘される事項が増えている
- 車両の大型化により、入庫できない車が出てきた
このうち「部品供給終了の案内」と「入庫できない車が出てきた」は、修繕では解決できない項目です。該当する場合は、早めに具体的な検討に入ることをおすすめします。
なお、更新には設計から工事完了まで一定の期間を要します。故障してから検討を始めると、その間の駐車場所の確保が課題になります。時間的な余裕を持った計画をお立てください。
機械式駐車装置は更新以外の選択肢もある
機械式駐車装置の設備更新には、いくつかの方向性があります。
物件の状況によって適した方法は異なるため、比較したうえで判断してください。
部分改修で延命する
劣化が進んだ部位のみを交換し、使用期間を延ばす方法です。
初期費用を抑えられる一方、交換しなかった部位の劣化は残ります。他の部位も同時期に寿命を迎える場合、結果的に複数回の工事が必要になることもあります。
修繕積立金の状況や、今後の使用予定年数を踏まえて判断してください。
機種を入れ替えて更新する
既存の装置を撤去し、現行機種へ入れ替える方法です。
近年は車両の大型化が進み、設置当時の規格では入庫できない車種が増えています。更新の機会に、現在の入居者の車種構成に合った仕様へ見直すことができます。収容台数や対応する車両サイズを再設計できる点が、更新の利点です。
平面化して機械を撤去する
機械装置を撤去し、平面駐車場として使用する方法です。
空き区画が多い、維持費の負担が重いといった物件では選択肢になります。機械部分がなくなるため、保守点検の負担は大幅に軽減されます。ただし収容台数は減るため、稼働率の確認が前提となります。
- 平面化についてはこちらの記事で詳しく解説しています
どの方法が適しているかは、稼働率、修繕履歴、区画数、今後の使用予定によって変わります。当社では現地調査のうえ、複数の選択肢をご提示しています。
機械式駐車装置と自走式駐車場の耐用年数の違い

更新を検討する際、自走式への変更を候補に挙げる方もいらっしゃいます。
両者の違いを整理します。
自走式駐車場
機械装置を持たないため、駆動部分の劣化という概念がありません。建物としての躯体が主体となるため、機械式より長期間の使用が可能です。保守についても、機械部分の点検が不要な分、負担は軽くなります。
機械式駐車装置
限られた面積で多くの台数を収容できる点が利点です。同じ敷地面積で比較した場合、収容台数には大きな差が生じます。一方、機械部分の保守が必要となり、経年に伴う部品交換も発生します。
都市部のマンションで機械式が採用されてきたのは、敷地面積に対して必要な駐車台数を確保する必要があったためです。自走式へ変更する場合、敷地に十分な余裕があるか、台数減少が許容できるかが判断の前提になります。

機械式駐車装置の耐用年数に関するよくある質問
ここからは、機械式駐車装置の耐用年数に関するよくある質問に回答していきます。
法定耐用年数を過ぎたら使えなくなりますか
法定耐用年数は税務上の計算に使う年数であり、設備の使用期限ではありません。
年4回以上の定期点検を継続し、劣化した部品を適時交換していれば、25〜30年程度の使用が可能です。実際に、設置から30年以上が経過しても稼働している物件があります。
耐用年数は何年で計算すればよいですか
設置形態や登記の状況によって適用される区分が異なります。
構築物として扱う場合と機械及び装置として扱う場合があり、個別の判断が必要です。所轄の税務署または顧問税理士へご確認ください。
部品がないと言われた場合はどうすればよいですか
代替品での対応が可能か、装置ごとの更新が必要かを確認する必要があります。
部品供給の終了時期は一律に決まっているわけではなく、大手メーカーでは販売から25年経過した機種でも供給が続く例があります。一方、事業を終了したメーカーの装置は供給の継続が見込めません。現在の装置の状態とあわせて確認したうえで、修繕を継続するか更新へ移行するかをご検討ください。当社でもご相談を承っています。
更新にはどのくらいの期間がかかりますか
現地調査、設計、機器の製作、工事という工程を経るため、一定の期間を要します。
物件の規模や工事内容によって変わるため、具体的な期間は個別にご案内します。工事期間中は該当区画が使用できなくなるため、代替駐車場の確保についても事前に計画が必要です。
修繕と更新、どちらが費用を抑えられますか
今後の使用予定年数によって変わります。
短期間であれば修繕、長期間の使用を前提とするなら更新のほうが、総額で有利になる場合があります。過去数年の修繕費を集計し、更新費用と比較することで判断材料が得られます。
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まとめ|機械式駐車装置の耐用年数は設備の状態と保守履歴で判断する
機械式駐車装置の耐用年数には、税務上の法定耐用年数と、実際に使用できる年数の2つがあります。
法定耐用年数は減価償却の計算に用いるもので、設備の寿命を示すものではありません。年4回以上の点検と適時の部品交換を継続していれば、25〜30年程度の使用が可能です。区分による年数の違いについては、税務署や税理士へご確認ください。
長期修繕計画上は、25年目が入れ替え更新の検討時期になります。ただし塩害や湿気の影響を受ける環境では、それより早い時期の判断が必要になる場合もあります。
判断の材料になるのは、経過年数そのものではなく、点検結果と修繕履歴です。故障の頻度、修繕費の推移、部品の入手状況といった実態から、修繕を続けるか更新するかを検討してください。
株式会社アイ・エー・エスでは、機械式駐車装置の更新・改修・平面化について、現地調査のうえで複数の選択肢をご提案しています。設備の状態について気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。


